半導体デバイス 省エネ化、高性能化へ技術が一層進化
SiC、GaN使ったパワー用や大電流対応アナログICなど開発活発化
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 2013年も半導体デバイス技術は、さらなる進化を遂げ、さまざまな機器の省エネ化、高機能・高性能化などを実現する。省エネ化に向けては、パワー半導体分野で新素材を使った次世代デバイスの応用が本格化する。またパワーデバイスを制御するマイコンも性能と信頼性を高めた製品開発が加速する。機器の高機能化では、プロセッサなどの進化だけでなく、大電流対応の高精度アナログICやセンサーの開発などが活発化する。

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【パワーデバイス】
電源向けIC/パワー半導体も、地球環境負荷低減へのニーズが高まる中で、技術開発が加速している。半導体・デバイスに電力を供給する電源ICでは、電力変換効率の向上、サイズの縮小、ノイズ低減などが主な技術開発項目。特にCPUやFPGAなどの低電圧駆動、大電流化への対応も必要となり、より安定した高精度出力が要求されている。同時に電源回路の設計も難易度が増し、回路設計エンジニアを悩ましている。

その中で、パッケージ内にインダクタなどの外付け部品を搭載し、モジュール型の電源ICの製品化が相次いでいる。外付け部品の内蔵化で、回路サイズを縮小できるだけでなく、変換効率でも向上が見込める利点がある。また、インダクタ以外にも電源回路用外付け部品を内蔵し40Vを超える電圧の入力から1Vを切る低電圧の出力を1パッケージで行えるモジュール型ICも複数のアナログ半導体メーカーから発売され、産業機器や通信機器分野を中心にさらに普及していく見通し。

インバータや、モーター駆動などに使用されるパワーMOSFETやIGBTといったパワー半導体分野では、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)に代表される化合物半導体を用いたデバイスの実用化が本格化している。これらの化合物半導体は「ワイドギャップ半導体」と呼ばれ、従来のパワー半導体材料であるシリコンよりも高耐圧、高速動作、高温動作、高熱伝導という特質を持ち、電力変換を行うパワー半導体に適用することで多くの利点をもたらす。

身近なところでは、パソコンなどのAC―DC電源に用いれば、電源を大幅に小型化でき、機器に内蔵できるようになる。また太陽光や風力発電のパワーコンディショナ、電気自動車や鉄道、産業機器のモーター制御などのインバータ回路に用いることで、システムの小型化、電力変換効率の向上に貢献する。13年は、GaN、SiCを用いたスイッチング素子のサンプル出荷、量産が相次いでスタートする。

【信号処理用 アナログIC】
信号処理を行うアナログICは、機器のデジタル化に伴い重要度が増している。機器に搭載されるセンサーやタッチパネル、カメラなどのインターフェイスからのアナログ信号を処理するアンプやデータコンバータなどは、その精度や速度が機器自体の性能を大きく左右する要素であり、大きな技術革新が求められる。

また、高集積化技術や、デジタル回路との混載技術も重要になっている。モバイル機器などでは、小型化ニーズが高く、アナログICも電源系を含めて、ICを統合したSoC(システムオンチップ)型のアナログICやデジタル回路を混載したミックスドシグナルICへの需要が高まる。またマイコンなどは、処理性能以上に、アナログ回路部の性能、精度を要求される場合も多く、アナログ技術、ミックスドシグナル技術の重要性が高まっている。

【ロジック・メモリー】
ロジック系半導体では、12年にインテルが22ナノプロセス採用プロセッサを量産化し、13年は、FPGAなどで20ナノプロセス適用に向けた微細化技術開発が行われる。同時に、微細化技術に頼らない高集積化技術として3次元実装技術(3DIC)の開発も活発化していく。12年には、シリコン基板上に4つのチップを実装し、シリコン貫通電極(TSV)で接続した超大規模FPGAも製品化され、13年はさらに3DIC、TSV技術の応用範囲拡大が期待される。

メモリーでは、スマートフォンなどの普及に支えられ需要が拡大するNAND型フラッシュメモリーでは19―24ナノプロセスの「2Y世代」が量産の主流で、13年は18ナノ以降の「1X世代」の開発が本格化する。

あわせて、トランジスタ構造などを見直した新構造NANDメモリー(ポストNAND)の開発も行われる。DRAMでも「2X世代」の製品生産がスタートしている。