ノイズ対策技術 

より高度化、重要性高まる

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 ノイズ対策技術の重要性が一段と高まっている。スマートフォンやタブレット端末などの成長分野は、利用周波数の高周波化および多様化、信号処理の高速化を伴いながら、新製品開発が活発化。また、太陽光および風力発電をはじめとする再生可能エネルギーに関連する分野や、EV、HEVが台頭してきた自動車分野でも新たなノイズ対策技術が求められるようになった。世界のノイズ規制に適合した最適なノイズ対策技術が進化し続けている。

ノイズ対策に必要不可欠な測定・評価ラボ
ノイズ対策で必要不可欠な施設が電波暗室を核とした測定・評価ラボ。電子機器や自動車におけるノイズがどれだけ発生しているか、逆にノイズからどれだけ耐えられるかという測定から、フィルタリングなどを施し対策した後に、再び測定・評価し、各国のノイズ規制への適合申請などまで行うもの。

電波暗室は一般的に高性能な電波吸収フェライト材と耐久性に優れた発泡スチロールを活用した小型、高性能電波吸収体を使用。EMI測定、イミュニティ試験に利用するもの。EN、FCC、VCCI、CISPR、ISOなど世界のEMC規格に適合するための評価、試験を行う。

EMC対策、評価用電波暗室は10メートル法として一般的な標準タイプ、重機用、自動車用があるほか、一般タイプの6メートル法、高性能タイプ、スタンダードタイプ、廉価タイプといった3メートル法、さらには小型の簡易型電波暗室がある。

LCフィルター、薄膜タイプの品揃え充実
各種電子機器や自動車で使用される具体的なノイズ対策部品は、コンデンサ、コイルを基本にLCフィルターなどが一般的に用いられている。いずれも小型、低背化、高性能化が求められる。世界で普及が活発化しているスマートフォンやタブレット端末は、これまでの携帯電話に比べ、小型で多機能化しているため、より高度なノイズ対策技術が求められる。

ノイズ対策部品は、積層セラミックコンデンサをはじめ、インダクタ、LCフィルターなどが、1005から0603、0402サイズまで小型化が進展。さらには複数ラインのノイズ対策が可能なアレイタイプなどが採用される。コイルでは巻線タイプに加え、積層タイプの小型化に向けた開発が活発化している。

LCフィルターは、最近では薄膜タイプでの品揃えが充実してきた。これは高速差動伝送ラインの対策で有効になるため。薄膜技術によって、LCフィルターでも複数ラインのノイズ対策を施すことが可能なアレイタイプがコネクタや液晶ラインなどで採用されている。

こうした部品に加え、最近ではノイズ抑制シートが注目されている。ノイズを内部に取り込み、シートの磁気損失よって減衰(吸収)させるもの。厚さ25μ―1ミリメートルのシートをノイズの発生源や伝搬路に貼るだけで、効果的にノイズを抑制する。半導体パッケージ上への貼り付けをはじめ、フレキシブル配線板のファインパターン上を覆うなど、利用が広がってきた。

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新エネやパワーエレ分野で相次ぎ新技術
 一方、太陽光および風力発電、EV、HEVといった自動車など、新しいエネルギー、パワーエレクトロニクス分野でのノイズ対策の重要性が高まっている。これらに共通しているのは、創エネ、蓄エネ、省エネ、活エネ。いずれもインバータをはじめとする電源技術の台頭であり、こうした分野でのノイズ対策技術の高度化が要求されている。

 その中で、箱型パワーラインノイズフィルターは、小型で高減衰化を推進するために材料から部品、さらには回路構成まで新しい技術が相次いで開発されている。同フィルターは、一般的にフィルムコンデンサとフェライトコアベースのコイルから構成。高減衰タイプについては平板の銅線を縦巻したタイプ、さらにはフェライトに代わるコア材としてアモルファスやメタル系コアを使用した例も少なくない。さらに最近ではノイズ対策と雷サージ対策を1個で処理できる複合機能型ノイズフィルターが開発された。

 太陽光発電では、パワーコンディショナという電源が用いられる。ノイズフィルターはこのパワーコンディショナを挟んで、発電パネル側のDC側ノイズフィルター、系統(負荷)側のAC側ノイズフィルターが用いられる。

 さらにインバータに絡んだリアクタやチョークコイルなども新製品開発が活発。いずれもコイルのコア材料、コア形状、巻線工法などの最適化でノイズ対策の最適化を目指している。

 リアクタは、メタル系コアを採用し、平角線を縦巻きにするエッジワイズタイプの採用が活発化。さらに今後はスイッチング素子のIGBT化など、高周波化にともなう技術進展が注目される。