特集:抵抗器技術

抵抗器の技術・製品動向
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 抵抗器は、厳しい局面を乗り切り、新たな成長軌道に乗った。技術進展によって、既存製品の高付加価値化による抵抗器搭載点数の増加に加え、エコカー、太陽光発電、LEDといった環境、省エネをキーワードにした新しい市場が形成され、今後の成長戦略が描けるようになってきた。抵抗器は新たな成長に向けて、引き続き新製品開発が活発化する。

  携帯電話は高機能なスマートフォンの出現によって再び生産台数が増加基調に転じている。また、タブレットPCも生産台数を伸ばす。薄型テレビは、LEDバックライトタイプや3D―TVが高画質、高音質化に加え、ネットワーク機能を強化する。

  既存製品のこうした高付加価値化の動きは抵抗器の搭載点数を増やし、需要増を押し上げる。

  さらに新たな市場として環境、省エネ関連分野が立ち上がってきた。自動車ではハイブリッドカーや電気自動車の普及が始まり、快適、安全、信頼性などに加え、インバータやDC―DCコンバータなど、モーター駆動に関連する新たな抵抗器市場が出現。太陽光発電はパワーコンディショナをはじめとする関連機器向けの抵抗器市場が動き出した。LED関連でも駆動する安定器(電源)用のパワー抵抗器が市場を拡大する。

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高電力、低抵抗、高精度化
 抵抗器各社ではこれまでのチップ抵抗器の品揃えの拡充、小型化の展開に加え、高電力、低抵抗、高精度化といった高性能化を追求し、環境、省エネ分野でのビジネスチャンスを探る。

  さらに通信ネットワーク関連ではNGN(次世代通信ネットワーク)関連、放送はデジタル化など、新たなインフラ整備に絡んだ需要が動く。健康・医療機器、交通など、これまでニッチ市場とされてきた需要分野も環境、省エネが絡み抵抗器市場を拡大する。

  主要各社では1005サイズ以上の汎用チップ抵抗器は海外主導の生産体制を整備。国内では高密度実装化に対応した0603サイズ、超小型アレイの生産を増強。さらにモジュール分野で搭載が本格化してきた0402サイズの量産拡大への取り組みが活発化してきた。0402サイズは超小型のため、特に寸法精度の安定化が強く求められている。実装精度やハンダ付け性の向上が重要になるためで、各社ではカッティング精度を高めるなど独自技術を施している。

  また、機能を重視した新製品の市場投入も活発なものがある。すでに電流検出用途に向けた低抵抗チップ抵抗器はモーター回路や電源回路での採用が活発化し、需要が増加基調にある。小型で、十分な定格電力を確保しつつ、超低抵抗値を実現するために、厚膜、薄膜、さらには金属箔、金属板といった様々な抵抗素子が用いられるようになった。その中で、特に金属板チップ抵抗器の品揃えが充実。様々な電流検出用途で採用が広がっている。その1つとして、1608サイズで0.25W定格を実現。しかも10mΩの低抵抗を温度係数150ppm/℃の高精度で得られる新製品が開発された。

  このほか、電源周辺部の回路向けに硫化に強く硫化発生による抵抗値断線を防ぐことができる耐硫化型チップ抵抗器、自動車電装などの温度変化が激しい環境での使用向けに長辺電極化で従来のチップ抵抗器に比べ、ハンダ接合信頼性が大きく向上し、熱衝撃に対して強い接合強度を有するのと同時に、高電力化を可能にした高電力チップ抵抗器、自動車エンジンの制御回路向けなどに、一般のチップ抵抗器に比べ、耐サージ特性に優れる耐サージチップ抵抗器など、相次いで新製品の開発の進展している。
  耐サージチップ抵抗器では、静電耐圧3kVを保証した新製品が開発された。これは高い定格電力を必要とする回路、電源から侵入するサージ電圧対策として開発された。抵抗体への電圧の局部集中を軽減させる抵抗体パターンを設計し、高精度診察、高精度トリミング技術を用いることで、耐サージ特性が高く、高精度な抵抗値を実現した。

  さらに高耐圧チップ抵抗器では1608サイズで350V耐圧を実現。これによって、高電圧回路の部品点数を削減できる。カメラのフラッシュ回路、ディスプレイバックライトのインバータ回路などに適する。

  モジュールの小型化、高機能化を推進するために部品内蔵基板の開発、実用化が始まった。多層プリント配線板の内層に埋め込むチップ部品は超小型チップを用いるが、標準サイズでは厚みあり、基板全体を薄くできない。そのため、最近では超薄型チップの開発が活発化してきた。特に積層セラミックコンデンサ、インダクタ、抵抗器を対象に超薄型化製品の開発が進んでおり、チップ抵抗器では厚み0.15ミリメートルの製品が登場した。電極も基板内蔵に対応して銅電極を採用し、基板内で銅メッキ接続を可能にしている。


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2型チップで厚さ0.6ミリ実現
 チップ半固定抵抗器の小型化技術も進展している。サーメット系の完全密閉型トリマーは4型、3型チップが主体。薄型化への取組みが活発化している。

  一方のメタルグレーズ系のオープンタイプは3型と2型チップが主流。実装密度や価格などによって使い分けされている。光ピックアップのレーザパワーの調整用として市場が拡大してきたが、さらに薄型化のニーズに対応して2型チップでの厚み0.6ミリメートルを実現した。

  こうした新製品は自動車を含め、各種電子機器における高性能化、高信頼性化という技術トレンドに対応したもので、特に電源回路、高電圧回路、自動車電装回路といった厳しい条件下で使用される分野で市場が形成されている。