金属イオン利用の3端子スイッチ素子


3端子NanoBridgeの構造


NECはこのほど、物質・材料研究機構(NIMS)、科学技術振興機構(JST)と共同で、固体電解質の中での 金属イオンの析出・溶解反応を利用した3端子スイッチ素子(3端子NanoBridge)を開発、その動作実験に成功した。

3端子NanoBridge(NECの登録商標)は、プログラムロジックの再構成用スイッチとして用いるのに必要な制御性、信頼性を備えており、高性能なプログラムロジックの実現に向け大きく進展する。

新素子は次のような特徴を持つ。

(1)経路であるソース・ドレインとは別の第3の端子(ゲート)でソース・ドレイン間の金属イオンの析出・溶解を制御、素子のオン・オフ状態を切り替える。

(2)ゲートのほかの電極とほぼ絶縁されているため、回路に大電流を流すことなくスイッチングができる。

(3)析出させる金属架橋の太さが制御可能となり、エレクトロマイグレーション耐性や素子の信頼性が向上。

これまでプログラムロジックの性能向上は微細化によって達成されてきたが、LSIのさらなる微細化に限界が予想され、今後は微細化だけに頼らない性能向上が求められている。

今回開発された3端子素子は構造の工夫により、ドレインの電極面積を小さくして金属が析出できる場所を限定し、最小限の金属イオンでソース・ドレイン間が接続できるようにした。また、析出した金属によってソース・ドレイン間が接続する前にゲートとほかの電極間が接続するのを防ぐため、ソース・ドレイン間の距離をゲートとほかの電極間の距離に比べて短くした。これらにより、従来の2端子素子に比べスイッチング時の電流を2ケタ以上低減できたという。

新素子の実現で微細化に頼らず、プログラマブルデバイスの低価格化、機能・性能の向上が図られ、モバイル機器やデジタルTVなど、電子機器の開発の効率化・高性能化が期待される、という。

今回の成果は5日から7日まで米国ワシントンDCで開催の「IEEE国際電子デバイス会議」(IEDM)で6日に発表される。

◇固体電解質=内部を自由にイオンが動き回ることのできる固体。

◇エレクトロマイグレーション=金属線に電流を流した時、電子流によって金属原子が動かされ、抵抗が大きくなる時には断線に至る現象。