マグネティクスインテグレーテッドRJ-45コネクタ


タイコ エレクトロニクスのパワー用マグネティクスインテグレマイナステッドRJ-45コネクタは、パワーオーバーイーサネット(PoE)への、より簡単な移行を可能にする。

この新しいデザインは、IEEE802.3af PoEシリコン・コントローラをインテグレーテッドするボード上に、マルチポート・コネクタを導入するためのフレキシビリティをカスタマに提供する。このインテグレートされたコネクタは変化しつつある産業界、カスタマ、IEEE802.3afによって可能とされ、かつ、有害物質の削減(RoHS)義務の要求に適合するように設計された。

RJ-45に戻った理由

今までのモジュラ・ジャック(RJ-45)に戻ったのにはいくつかの理由がある。理由は、ほとんどの設計者に明白なものもあるが、最先端のハードウエア・デザインに関与する設計者にのみ明白なものもある。

このデザインの試みを最初に促したものに、2003年6月のIEEE802.3af PoE仕様の批准がある。これは、既存のイーサネット接続での製品検出と13W/ポートまでの電力供給の標準化の方法を明確にしている。高速イーサネット・システム(10/100Mbps)の場合、4つのペア・ケーブル中における未使用の2つのペアまたは、特別に設計したマグネティクスを利用することによって、2つのデータ・ペアから電力を供給することができる。ギガビット・イーサネット・システムの場合、データは通常ペア1および2から供給される。

既存のシステム、または十分な容量や電力、冷却能力を持たない新しいシステムでは、ミッドスパン供給(MSE)を利用することができる。ミッドスパン電力の導入は、後述する特殊な信号のインテグリティの問題をもたらす。しかしながら、このアプローチは高速イーサネット・システムでは極めてうまくいくことが証明されている。

シグナルインテグリティの問題

アイソレーションマグネティクスを持つRJ-45はシステムの発信端および受信端でのみ使用されているので、デバイスの一部と思われ、電気的要件が緩くてもかまわない。これらのデバイス間のすべてのコンポーネントはEIA568/カテゴリ 5E要件のより厳格な要件でコントロールされるが、マグネティクスアセンブリはそうではない。カスタマがギガビット・イーサネットに移行するとクロストーク性能が不十分なため、強固なシステムの設計を困難にし、ミッドスパンPoEソリューションのインプリメントを実質的に不可能にする。これがインテグレーテッドマグネティクスを持つRJ-45の性能を改良しなければならない理由である。

新しいLANスイッチのデザインは、ミッドスパンによるソリューションを必要とすることなく、本質的なPoE機能を提供するための特徴を追加している。新しい世代のスイッチは、より高いポート密度(スイッチにつき24から48ポート)と、より高速の伝送速度に焦点を当てている。PoE機能をこのスイッチに取り入れるために現在有効な方法は、個別的なソリューションまたはPoE DIMMボードである。これらの2つのオプションでの主要コンポーネントは、シリコン・パワー管理コントローラである。

今日、いろいろなシリコン・サプライヤが電力ソーシング機能(PSE)製品とパワード・デバイス(PD)製品の両方を提供している。これにはLi‐near Technology、Maxim、PowerDSine、およびTexas Instrumentsが含まれる。

効果的なパッケージングの実現

タイコ エレクトロニクスは、フレキシブルで高性能の製品にいろいろな特徴を組み込んだ製品を提供しているが、その目的は既存製品の電気的性能より優れ、かつ、新しい電力供給要件を満たす製品を提供することであった。

まず最初に行ったのは、従来のハンダ付けフットプリントをなくし、プレスフィット製品に切り替えることであった。これは高価なウェーブハンダ付けをなくし、2006年7月のヨーロッパRoHS要件への移行を容易にする。2つ目の決定は、マグネティクスのみのシステム、PoEイネーブルド・システム(RJ-45から分離したPoEデバイス)、PoEインテグレーテッドシステム(RJ-45アセンブリ内にインテグレーテッドされたPoEデバイス)間の移行を簡単にするためのフットプリントを、プレスフィット・コネクタに提供することであった。この組み合わせは、設計者にとって従来システムのボードと電力供給を組み入れたボードの設計自由度が増すことになる。

次に効果的なパッケージングの実現が課題となった。目標は今までのシート・メタル内に、クロストークを減らし、より高い電流を必要とするPoEに適したマグネティクス、LED、高レベルでのEMI対策を組み合わせた部品を提供することであった。これを達成するために、種々の独自機能をデザインに取り込んだ。

パッケージングの最初の領域は、他用途用のコア・コンフィギュレーションを使う能力を提供しつつ、既存製品を上回るモジュラマグネティクス/RJ-45パッケージをインプリメントすることであった。既存のマグネティクス/RJ-45アセンブリは、カテゴリ5E用途ではスタンドアロンRJ-45ジャックより通常クロストークが非常に高くなる。ほとんどのコネクタメーカーは、11dBの範囲内、または許容できるCat5E限界以上の値を見積もっている。より多くの設計者が1000BaseT製品に向けて移行すると、このレベルの性能を達成することは困難になる。精密なコンピュータのモデル化と独自のマグネティクスアセンブリを組み合わせることによって、クロストーク性能を最小限6dBだけ改善でき、場合によっては12dBも改善できる。これは通常のチャンネルで他のコンポーネントと同じように動作する製品を提供し、結果として設計者の仕事を簡素化する。


〔図〕RJ-45に導入される電力

マグネティクスは何を行うか?

マグネティクスは必要な種々の機能を実行する。まず、IEEE802.3およびIEC60950で要求されるDCアイソレーションを行う。さらに、共通モードのEMIコントロールを容易にし、PoE用途へのDC電力の導入を可能にする。

性能の改善は確かに製品に望ましいことであるが、アセンブリをシステムに組み込めず、EMIテストに合格しなければ製品は使用できない。これが、まさにタイコ エレクトロニクスがSFPおよびXFPファミリの製品を設計し、シールド・デザイン内でそれらを使用する理由である。

このデザインの目標は、現在の製品でEMI性能を6dB以上改善することだった。この目標は、システムが複数のギガビット・バックボーンとシリアル・アップリンクを使う時より大きな課題になる。最大48個のRJ-45ポートを持つ製品上で1および10GbpsシリアルI/Oリンクを混合させることは通常行われている。また、多くのギガビット物理レイヤ(PHY)は125Mヘルツのクロック信号を持っている。これとシステム内の他の高速ノイズ・ソースは、EMIテストに合格するための課題となる。

Mag 45 PoEコネクタ


Mag 45 PoEコネクタ

タイコ エレクトロニクスの新しいMag 45 PoEコネクタは、EMI性能のバックボーンを提供するさまざまな内部および外部シールドを用意し、電気的性能に優れたコネクタおよびマグネティクスアセンブリと組み合わせることにより、必要なEMI特性を実現する。この性能を確認するために、ギガビットPHYを持つ評価ボードを設計・製造し、既存および新規製品の性能を比較した。評価テストにより製品の性能改善が確認され、またカスタマにおける評価でも同様に改善が確認された。

最初の疑問は「なぜPoEをモッド・ジャックに組み込むのか?」である。主な理由は、ボードに配置されると自分で動作できるようにするジャックの自動モードを使う能力である。これによりボード・レベルのコンポーネントが非常に減少し、部品リストが簡単になり、貴重なボードスペースを開放する。コントロールを追加する時にパーツを減らしボードを利用したい場合は、製品を拡張モードでコントロールできる。拡張モードコントロールは電力供給、ポートの優先順位、リモード診断、非802.3af規格製品との互換性へのコントロールを可能にする。

PoEを望むものの、それをインテグレーテッドすることを望まない場合、「イネーブルド」ソリューションを提供する能力がキーになる。これを提供するには、各RJ-45のマグネティクス中央タップからホスト・ボードへ2本のPoEリードを接続することが必要になる。通信および電力に使用するインテグレーテッドアセンブリ上のピンは、ここで中央のタップ/ホスト間ボード取り付けに使用できる。これは、3種類のデザイン・オプションのそれぞれで同じになるように、信号ライン、仮想デバイス・ドライバライン、およびLEDラインを設計している。

PoEシリコンをスタックしたRJ-45フォーム・ファクタにインテグレーテッドする時、いくつかの課題が持ち上がる。最初はスペースの問題である。電源ソース・シリコンに密接に配置しなければならないいくつかのコンポーネントがあるため、コンポーネント密度が非常に高くなる。2番目は必要なアイソレーションを実現すること、3番目はシリコン、センシング・ダイオード、および抵抗器からの発熱を逃がす方法である。

フルインテグレーテッドのソリューションを使う場合、電力のフル供給時においてもシステムが十分に冷却されることを保証するため、十分なエアフローが要求される。高密度の48ポート・システムの場合、製品が機能するには200LFMの層流エアフローが必要なことがテストでわかっている。

また、アセンブリにインテグレートされたサーマルレジスタは、フルにコンフィギュレートされたシステムにおいてパワー制限もしくはポートのシャットダウンの必要性をチェックするコミュニケーションのためのフィードバックを提供する。

いくつかの主要サプライヤはすでにPoE可能なLANスイッチ製品を提供、また、近い将来の提供開始を予定している。この要求をサポートするために、タイコ エレクトロニクスはマグネティクスのみのシステム、PoEイネーブルド・システム、および完全なインテグレーテッドシステムに10/100および10/100/1000用の製品を用意している。

<タイコ エレクトロニクス アンプ(株)>