特集:組込みOS/環境技術
ウインドリバープラットフォーム


大規模化、複雑化が進展する組込みソフトウエア。組込みソフトウエアの開発は、時間、コスト、工数が急激に増大し、様々な問題を抱えている。

このように組込みソフト開発を取り巻く環境が厳しくなる中で、ウインドリバーは「DSO;Device Software Optimization」すなわち「スマートデバイス搭載ソフトウエアの最適化」を推進するトータルソリューションを展開。「より速く」「より優れた」「より信頼性の高い」機器開発を支援するソリューションを提供している。

DSO推進エンジンの中核を成すのが、ソフトウエア統合開発プラットフォーム 「Wind River Platform」だ(図1)。


〔図1〕Wind River Platformマーケット分野別プラットフォーム製品

汎用プラットフォームのほかに、「デジタルコンシューマ」「ネットワーキング・通信」「オートモーティブ」「インダストリアル」「航空宇宙・防衛」といった分野・市場に特化したプラットフォームを用意。

各分野のニーズに応じたミドルウエア、OS、評価ボード、ハードウェア開発支援ツール、統合開発環境に加え、受託開発やコンサルティングなど組込みソフト開発に関するすべてのサービスをトータルで提供する。

例えばOS。ウインドリバーと言えば「VxWorks」のイメージが強いが、「Linux」もサポートしている。マルチコア化などスマートデバイスが多様化するなか、1つのOSが「DSO」を実現できるとは考えにくく、「DSO」推進を掲げるウインドリバーは当然のように、複数のOSをサポートしていくというわけだ。

もちろん、リアルタイムOSとして優れた実績がある「VxWorks」のバージョンアップは継続的に行う。最近では、メモリー・プロテクションと拡張性が高いメッセージ・パッシング機能をサポートする「VxWork6.x」のバージョンアップを実施し、「VxWork6.1」を近日リリースする。

一方、「Linux」もKernel.org LinuxやOSDL Carrier Grade Linuxをベースにウインドリバーの技術・ノウハウを組込み、提供している。

これらOSなど「Wind River Platform」が提供する各種ソフト、ツールをつなぎ、DSOを具現化する役割を果たすのが、統合開発環境(IDE)「Wind River Workbench」。

ハードウエアの立ち上げから製造まで開発プロセス全工程をサポートする真の“統合”開発環境である(図2、図3)。

〔図2〕ハードウェアの立ち上げから製造まで開発プロセス全工程をサポート
〔図3〕Wind River Workbench

「Wind River Workbench」の特徴と利点
(1)オープンフレームワーク「Eclipse」ベース
(2)さまざまな“マルチ”に対応
(3)容易な操作を実現するGUI環境
(4)多様な可視化ツール
(5)充実したサポート体制

(1)オープンフレームワーク「Eclipse」ベース
「Eclipse」(ロゴ=図4)とは、ツール提供企業のコミュニティがオープンソース、オープンライセンスのIDEで、エンタープライズ分野のIDEとしては一般的で、組込み分野でも今後、普及が見込まれる。


〔図4〕Eclipseのロゴ

ウインドリバーは同コミュニティのストラテジックメンバーの1社で「デバイスソフトウエア開発プラットフォームプロジェクト」のリーダーを務める。Wind River Workbenchは、このEclipseをベースにしているため、プラグインによりユーザー独自のツールやサードパーティ・他社製の開発ツール群も簡単に統合できる。

(2)さまざまな“マルチ”に対応
マルチプロセス、マルチスレッド、マルチタスク、マルチコア、マルチプロセッサ、マルチセッションそして、マルチOSに対応する。

最新版「Wind River Workbench2.3」(Linux版・発売済み、VxWorks版・7月発売予定)はVxWork6.1対応のCPUが追加された。また、オンチップデバッグ(OCD)に対してもCPUが追加された。

2台のICEの同期動作が可能な「WindRiverICE」を使用することで、マルチコアの同時デバッグが行えるなど、マルチ環境をサポートする。

(3)容易な操作を実現するGUI環境
開発環境を1つに統合するWind River Work-benchは、各種操作画面も1つに統合可能(図5)。


〔図5〕Wind River Workbench GUI環境

使用状況に合わせて“ビュー”の数や大きさは、自由にカスタマイズすることができる。OSの切り替えなどの作業もマウス操作で簡単に行えるほか、エディタはコードのオートコンプリート機能、パラメータヒント表示、ソースファイルに対する構文の強調表示などの機能を搭載。編集マイナスコンパイルマイナスデバッグサイクルでの煩雑さやエラーの発生を軽減し、開発プロセスの短縮をサポートする。

(4)多様な可視化ツール
「Wind River Workbench」は、CPU使用率やメモリー状態、変数、関数トレース、関数カバレッジといった各種システム状態を可視化する各種ツールが統合済み。アプリケーションソフト開発のデバッグを容易にする。

(5)充実したサポート体制
アップデートやアップグレード、パッチなど様々な技術情報を公開するユーザー専用WEBページ(オンラインサポート)が開設され、24時間365日技術情報へのアクセスが可能。また、世界中に拠点を持つウインドリバーの強みを生かし、世界中で技術サポート窓口を開設する。

「ハードとファームウエアの開発は日本で、アプリケーション開発はインド、検証・製造は中国」というようなワールドワイドなプロジェクトに対しても、常に一律なサポートを行える体制が整っている。

ウインドリバーでは今年中にさらにワークフローやユーザビリティ、パフォーマンスの向上、新たなCPU対応を図った「Wind River Workbench2.4」をリリース予定。今後も「Wind River Platform」を核に、「DSO」実現に向けたソリューション事業を強化していく。

<資料提供:ウインドリバー(株)>