77GHz帯ミリ波車載レーダー用MMICチップセット開発に成功

資料提供:三菱電機


◆はじめに
 三菱電機は、自動車の安全性向上に期待されている76GHz帯ミリ波車載レーダー用MMIC(モノリシック・マイクロウェアIC)チップセットの開発に世界で初めて成功した。小型・高速・高信頼度の電子ビームスキャン方式により、同時に複数レーンの車を検知できるという画期的な特徴を持ち、同社では2006年の実用化(実車装備)を期待している。



◇ミリ波レーダー◇
 自動車の安全走行のため現在、各種のセンサーが開発されている。白線の監視を行うビデオカメラをはじめ超音波、赤外線レーザーレーダーがすでに実用されているが、今後の用途の多様性といった面で、関連業界が開発に注力している技術がミリ波レーダー。
 赤外線レーザーレーダーに比べ(1)距離と速度を高い精度で測定できる(2)雨霧などの天候による影響を受けにくい――のが特徴。
 センサー距離24メートル以内のSSR(ショート・レンジ・レーダー)タイプのミリ波レーダー(24GHz、76GHz)は主に、駐車ナジや側方死角監視を目的としたもの。これに対し、120メートル以上のLRR(ロング・レンジ・レーダー、76GHz)はACC(オートノモウム・クルーズ・コントロール)やプリクラッシュセーフティが主な用途。
 ミリ波レーダーの方式は、第1世代のクルーズコントロールのみのガン発振方式(ディスクリート)、プリクラッシュのみの)第2世代のMMIC方式(メカニカルビーム・スキャン方式)を経て、電子ビームスキャン方式と進化している。この方式は次世代の方式といわれ、100分の1でスキャンできる高速性から同時に複数レーンの車を検知することを可能にする(図1)。

写真1
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  図1
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三菱のミリ波車載レーダー用MMICチップセット
三菱のミリ波レーダーの構成とMMICの使用箇所


◇開発の背景◇
 自動車に搭載される76GHz帯ミリ波レーダー(波長=4@)は、前方の車両との距離・速度によるクルーズコントロールや衝突不可避のドライバーへの被害軽減などの安全性のため開発が進められている。従来は、目標物を補促するためにアンテナビームのスキャンを行う駆動部が必要だった。
 同社はそこで、90GHz地球衛星用ミリ波センサーをはじめとする衛星・防衛・民生分野で培ってきたGaAs―pHEMT(ガリウムひ素ピシュード・モルフィック・ハイ・エレクトロン・モビリティ・トランジスター)MMIC技術を活用して、電子ビームスキャン方式対応の76GHz帯ミリ波送受信器MMICフルチップセット(8品種)を開発した。
 今回、開発されたMMICは、電子ビームスキャン方式のキーパーツとなる送・受信用アンテナの切り替えスイッチ用MMICをはじめ、送信用MMIC、受信用MMIC。



◇開発の特徴◇
 (1)電子ビームスキャン方式車載レーダーに最適なMMIC(図2)。
 送・受信用アンテナの切り替えスイッチ用MMICは、新規に開発したミリ波トランジスターにより、電流が一定方向に流れ、使いづらい従来のダイオードスイッチに比較し、高いON―OFF比(28デシベル以上)、低挿入損失(3.5デシベル以下)、消費電流低減(ゼロ化)を達成した。
 ダイオードスイッチのアイソレーション約20デシベル(約100倍)に対し今回、開発のトランジスターは30デシベル(1000倍)以上が得られる。
 (2)十分なアンテナ出力電力を供給
 送信用電力増幅器MMICはトランジスターのユニットセルと電力合成回路の最適化により、76Gヘルツ帯における出力電力が30mW(従来比約1.5倍)と業界最高レベルの出力電圧を実現。これにより、スイッチ用MMIC挿入による出力電圧の損失を補い、チップセットとして十分なアンテナ出力の供給を実現する。
 (3)ミリ波レーダーの受信感度を6倍に向上
 受信用低雑音増幅器MMICは、76GHzにおける雑音指数が、3.5デシベルと業界最高性能を実現。
 また、ミリ波特性の温度依存性を抑制する回路技術を採用し,車載用に要求されるマイナス40〜プラス100度Cの広い温度範囲において4.5デシベル以下の低い雑音指数を実現している。20MMICにより、ミリ波レーダーの受信感度が約6倍(8デシベル)に向上し、前出のスイッチ用MMICの挿入により、受信感度の挿入を補い、チップセットとして,より優れた受信感度を実現する。
 この結果、8品種のMMICを組み合わせることによりFM―CW、パルスドップラーなどの方式のミリ波レーダーを構成することを可能となる(図3)。

図2
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  図3
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スイッチによるアンテナ切り替え構成例(電子スキャン)
パルスドップラー方式ミリ波レーダー構成例





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