トータル・パッケージング・ソリューション

谷川嘉一:タイコ エレクトロニクス アンプ(株)


 Tyco Electronicsのサービスを一言で表すならば、それは「トータル・パッケージング・ソリューションの提供」である。これはコネクターをはじめとする種々の電子部品の提供にとどまらず、ケーブルアッセンブリー、基盤アッセンブリーなどのVAO(Value Added Operation)製品、さらには高速シグナル伝送を実現すべくコネクター・バックプレーン/ケーブルアッセンブリーなどの伝送経路さらにはシグナル元を含めたシステムを解析・シミュレーションするなどのValue addedengineeringを併せたトータルなソリューションをカスタマーに提供するものである。
 この「トータル・パッケージング・ソリューション」の考え方の原点は、1980年代当時の「Interconnecting Ideas」などのコーポレート・テーマのもと、カスタマーのアイデア(トランスミッター・レシーバーなどの部品間レベルから、システム架間までレベルはさまざまではあるが)間の「接続」を提供することに始まっている。以来二十余年にわたり通信・情報処理・計測・航空宇宙分野をはじめとするさまざまなアプリケーションへの「トータル・パッケージング・ソリューション」の提供を続けており、そのインターコネクション技術を一部紹介したい。
 従来コネクター機能に対するユーザーからの要求は機構部品としての観点からの項目に主眼が置かれている場合が多く、それらは十分な対環境耐久性や繰り返し挿抜耐久性を持ち、確実な電気接続を保証することにあったと言える。このような要求はパワーを供給するラインへのアプリケーションにおいては今日現在も合理的であるが、シグナルラインへのアプリケーションにおいては「確実な電気接続」のみでは不十分なケースが年々増えつつあることはユーザーサイドにも広く認識されている。これはシグナルスピードが高速化されるにともない、コネクターは電気的に単なるトランスペアレント(透明)な機構部品ではなく「受動」部品としてシグナルに影響を及ぼす部品としての性格を表し始めるからである。
 コネクターに限らず伝送路を構成する要素において、どの程度のシグナルスピードからその受動性を意識した開発・設計を行わなければならないかの大枠のガイドラインとしては、シグナルの立ち上がり・立ち下がり時間相当での伝播距離が構成要素のサイズと同じ程度または小さいケースというのが一般的な認識である。もっとも速い真空中で考えると1ns(ナノセコンド)で約300mm、100ps(ピコセコンド)で約30mm、25psで約7.5mmであり、物質中を伝播する場合はその物質の比誘電率の平方根の逆数に比例して速度が変化するため、例えば比誘電率が4であれば速度が1/2となり、上記の伝播距離はそれぞれ150mm、15mm、3.75mmとなる。これらの距離はそれぞれバックプレーン/ドーターカード、コネクター、スルーホール/ビアなどの大きさである。
 したがって、これらの構成要素がシグナル伝送に無視できない影響を及ぼすようになり、その影響を考慮したシグナル伝送路の開発・解析・設計が必要となる。
 高速シグナル伝送に対応したトータル・パッケージング・ソリューションの提供のため、Tyco Electronicsにおいては、先に述べたように1980年代からこの分野の研究開発に着手しており、
1.高速シグナル対応コネクターの開発
2.バックプレーン/ドーターカードの解析・設計技術
3.コネクターとバックプレーン/ドーターカードの接続技術
4.上記すべてを含む伝送路全体を1つのシステムとして総合し解析・シミュレーションする技術
5.高速シグナル測定技術 などを主たる要素として、ユーザーのニーズに応えて来た。
 もちろん、提供されるソリューションのレベルの向上・進化においても、これらの技術要素は独立ではなく、互いに補完・補強しあっている。



◆高速シグナル対応コネクターの開発
 高速シグナル対応コネクターの開発は着手時から解析・シミュレーションを行い、他の要素との適合性を確認しながら行われる。
 例として、1990年代に開発・販売開始されたZ―Pack 2mm HM コネクターシリーズは、機構的にはIEC規格1076―4―101であるが、同時に1Gbpsレベルのシグナル伝送を実現した。その後、Z―Pack HS3 2.5mmコネクターで5Gbps、そして、Z―Pack HM Zdコネクターでは10Gbpsのシグナル伝送を実現してきている。
 これらのコネクターを含む主要なコネクターについては、ユーザー用としてSPICE解析用にシングルラインモデル、およびクロストークなどのライン間の相互作用までも含むマルチラインモデルを用意している(図1)。

図1
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高速シグナル対応コネクター


◆バックプレーン/ドーターカードの解析・設計技術
 上記Z―Pack HS3 2.5mmコネクターでの5Gbps、Z―Pack HM Zdコネクターでの10Gbpsの実現に際してのバックプレーン/ドーターカードは、自社で開発・設計を行っているほか、Value Added製品としてのバックプレーンアッセンブリー用の高速シグナル対応、大型・多層板を開発している(図2)。

図2
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バックプレーン/ドータカードの解析


◆コネクターとバックプレーン/ドーターカードの接続技術
 既述したように、シグナルの立ち上がり、立ち下がり時間がピコセコンドオーダーになると、コネクターとバックプレーン/ドーターカードの接続部分であるスルーホールも影響を表し始める。スルーホールのキャパシタンスの影響を解析においては考慮すべきことは知られているが、Tyco Electronicsではスルーホールの影響を最小限にとどめる接続手法を提供している(図3)。

図3
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コネクター/基板インターフェイス


◆伝送路全体を1つのシステムとして総合し解析・シミュレーションする技術
 伝送路を1つのシステムとして見ることにより、初めてトランスミッターから発信された高速シグナルが正しくレシーバーに認識されるかが解析・シミュレーション可能となると言っても過言ではなく、また各要素技術の中でももっとも中心的な技術である。近年の超高速シグナルのシミュレーションにおいては、従来の手法が適用できないケースもあり、実測値からのフィードバックなどにより新たな手法を開発してきた(図4)。

図4
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Z-PACK HM-Zd評価システム


◆高速シグナル測定技術
 各要素技術のベリフィケーションは必須であり、またシステムシミュレーション技術の開発やコネクターモデルのファインチューニングにも活用されている(図5)。
 これら技術の詳細はwww.amp.com/simmulation参照下さい。
 また、現在は高速伝送分野のみならず、実装時における大きな問題のひとつでもあるThermal Management(熱・温度の解析や制御)分野などのValue added engineeringも提供しており、トータル・パッケージング・ソリューションとしての価値の向上を図っている。

図5
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GN2001の出力アイ・ダイアグラム(10.7Gb/s)





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