アレイ型積層セラミックコンデンサーの技術

茂木宏之:太陽誘電(株)玉村工場ML技術部


◆はじめに
 近年の高度情報化社会を支えるパソコン、携帯電話、デジタルAV機器など、電子機器の小型化・高機能化・高性能化が進む中、そこに使用される電子部品には、より小さく、安く、使いやすいものへと限りのない要求が続いている。セットが据置型から携帯型、さらには装着型へと確実に軽薄短小化し、これら端末で扱われるデータも文字、音声、静止画にとどまらず動画なども対象となり、その結果デジタル回路はますます高速のデータ転送を要求されることとなる。
 このため、CPUを代表とするLSIにおいても、より低電圧、大電流化が進行し、これに伴って発生するEMC環境の悪化が懸念されている。これらEMC対策部品として、コンデンサーについてはさらなる大容量、低ESR(等価直列抵抗)、低インピーダンスの商品が求められるとともに、より小型形状であることが重要となっている。
 太陽誘電では、これら要求に対するひとつの回答としてコンデンサーアレイを開発・量産している。コンデンサーアレイは、積層セラミックコンデンサーを小さな1パッケージ内に2個ないし4個内蔵したもの。機器の小型化・低コスト化に対応する部品実装密度向上の方向性のひとつとして、このコンデンサーアレイは魅力ある商品となるであろう。以下、コンデンサーアレイの特徴やその用途について詳しく紹介する。



◆コンデンサーアレイの特徴
 ・材料、構造
 図1に単品のコンデンサーの構造と材料を示す。誘電体にはBaTiO 3(チタン酸バリウム)を用い、電極材料には資源が豊富で安定入手が可能な卑金属であるNi(ニッケル)を用いている。定格電圧や静電容量値は誘電体の厚みや積層数を調整することによって所望の値を得る。図2にコンデンサーのアレイ化イメージを示す。太陽誘電では、1パッケージ内に2素子内蔵した2連タイプと、4素子内蔵した4連タイプのコンデンサーアレイを開発・量産している。4連タイプのコンデンサーアレイは、高密度実装と実装コストの大幅削減を可能とする。2連タイプでは、実装面積、実装コストの削減に加えて、パターン設計での自由度を損なわないという特徴を有している。
 図3に容量1μFのコンデンサーアレイ、単品の積層コンデンサー、タンタルコンデンサー、アルミ電解コンデンサーのインピーダンス(Z)・ESR特性の比較を示す。セラミックコンデンサーの特徴である低ESR・低インピーダンスというメリットはそのままに、アレイ化がなされていることがわかる。例えば、1MHzにおけるESR値は、単品の積層コンデンサーおよびコンデンサーアレイともに、10mΩ程度と低い値を示している。これは、その他のコンデンサーのESR値と比較すると、タンタルコンデンサーの約1/100、アルミ電解コンデンサーの1/1000と非常に小さな値である。
・コンデンサーアレイのメリット
(1)実装面積の削減・マウントコストの削減
 構造、外観から明らかなように、コンデンサーアレイを用いると大幅な実装面積の削減が可能になる。例えば、1005形状の単品のコンデンサーが4個実装されたときと、これが4個内蔵された4連タイプのコンデンサーアレイを比較した場合、20〜30%の実装面積削減が可能である。さらに、この4連タイプでは実装回数、実装時間もともに1/4に短縮でき、マウントコストの削減につながり、部材管理コストも低減できる。
 バイパスコンデンサーとして使用員数の非常に多い0.01μF、0.1μFおよび1μFをアレイ化することにより、より一層の効果が期待できる。
(2)既存設備の有効活用
 既存1608形状で使用していた設備でも、1410形状の2連タイプを使用すれば、1005形状相当の高密度実装に対応できるメリットがある。
(3)エコロジー(自然環境保護、地球環境保護)
 テーピング部材費が削減できるとともに、廃棄物排出量(テーピング部材)の削減も可能になる。
・アレイ化技術
 コンデンサーアレイに必要な技術は、基本的には当社が得意とするNi電極大容量積層セラミックコンデンサーで培った積層技術である。誘電体層厚を超薄層にするための、セラミック原料自体を超微粒子にする技術、誘電体を均一に薄膜化するための高分散成膜技術、また、内部電極材料には卑金属のNiを用いることで、数百層の電極多層化においてもコストアップを抑制するとともに、Ni紛を超微粒子にする技術と高分散化技術により、均一な内部電極を実現している。さらに、コンデンサーアレイには、これら積層技術に追加して各工程において、より高度な精度と管理が要求される。なぜなら複数個あるコンデンサーのうち、ひとつでも不良があれば製品としては成り立たなくなるからである。
 また、単品部品ともうひとつ異なる点は、端子電極の形成方法である。特に、2012形状の4連タイプでは、0.5mmという狭ピッチで端子電極を形成する。この電極寸法に大きなバラツキがあると、隣り合う電極間にハンダブリッジが発生する可能性がある。また、ハンダ付けの際に各電極に加わるハンダの引っ張り応力のバラツキによって、製品の位置がずれて固定されるといった問題も起こりかねない。
 したがって、コンデンサーアレイの端子電極の形成精度不足は、マウンタビリティの低下に直結するといえる。
 当社ではこのようなトラブルを未然に防ぐために、各種の技術開発・改良を行った。その結果として、図4に示すように各端子の寸法バラツキは非常に小さく、市場実績を見ても前記のようなトラブルは皆無である。

  図1
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  図2
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  図3
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  図4
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Ni電極大容量積層セラミックコンデンサーの構造図
コンデンサーのアレイ化イメージ
各種コンデンサーのインピーダンス(Z)・ESR特性
コンデンサーアレイの端子電極(2012形状4素子タイプ)

◆コンデンサーアレイの用途
 コンデンサーアレイは、デカップリング部品が複数並んでいるところや、チャージポンプのように同じコンデンサーが並んで配置された個所で、その効果が発揮される。以下、具体的な事例をいくつか紹介する。
(1)PCや携帯電話と周辺機器のI/Oインターフェイス回路(コネクター周辺)
(2)通信機器におけるRF回路とBB(ベースバンド)回路のインターフェイス回路(相互干渉防止)
(3)SwitchedCapacitor(チャージポンプ)方式のDC/DCコンバーター



◆コンデンサーアレイのラインアップ
 デジタル回路のバイパス用途のコンデンサーでは単体のチップコンデンサーの代わりに、コンデンサーアレイを使用することで、より高密度実装が可能なることは、これまでに述べたとおりである。従来のアレイタイプでは静電容量0.1μFが主力となっていたが、1μF以上の商品化も進んでいる。
 図5にコンデンサーアレイの形状とラインアップを載せる。これまで2012形状の2連タイプで1.0μFおよび2.2μFを開発・量産していたが、このたび、1410形状の2連タイプで1.0μFの開発が完了し、量産に至っている。この1410形状2連タイプのコンデンサーは1005形状のコンデンサーが2つ搭載されたタイプとなる。
 図6に示すよう、2つの1005形状のコンデンサーが配置されていた個所の置き換えが容易であり、回路設計過程での置き換えも可能となるため、使いやすさをより配慮した構造となっている。
 この1410形状2連タイプは、例えば携帯電話の液晶部に用いられるチャージポンプ回路などに適していると考えられる。図7に示すような制御ICの入出力コンデンサー以外の個所には1.0μFがよく用いられており、こういった個所にコンデンサーアレイは推奨できるといえる。
 今後、2012形状の4連タイプでも1.0μFの開発を予定しており、さらには、小型化の方向性として1005形状で2連タイプの開発を予定している。
 これら商品の開発によって、より一層、高密度実装に寄与できると考えている。

  図5
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  図6
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  図7
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コンデンサーアレイの形状とラインアップ
1005形状(2個)⇒1410形状2素子タイプへの搭載例
1410形状アイテムのチャージポンプ回路での使用例


◆まとめ
 今後ますます進化していく情報化社会において、コンデンサーに求められる特性として、大容量、低ESR(等価直列抵抗)、低インピーダンスがあげられ、さらなる高密度実装化のために小形状であることが必要であることを述べた。
 ここで紹介したコンデンサーアレイは要求に応える一つの回答として、今後もより一層バリエーションを増やし、より多くのお客様のニーズに合わせていけるようにしたい。
 コンデンサーアレイは、将来にわたって高密度実装を支えるキーパーツであることに間違いはないと考える。






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