コンデンサーの技術・製品傾向

エルナー(株)、富士通メディア(株)、松下電子部品(株)  (五十音順)

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機能性高分子アルミ電解コンデンサー


 部品需要の低迷からコンデンサー各社はターゲットとなる市場を絞り込むとともに、その市場で競争力のある差別化製品に力を入れて製品開発を進めている。対象市場としては情報通信機器、自動車エレクトロニクス、環境関連などである。
 コンデンサーは種類が多く、静電容量、チップサイズ、電気的特性、長寿命、高耐熱化など差別化できるところが多い。また、従来はそれぞれの用途に適したコンデンサーが使われてきたが、技術の進展により垣根がなくなってきているものもある。



◆アルミ電解コンデンサー
 代表的なコンデンサーがアルミ電解コンデンサーである。電子機器の電源部を中心に多く使われている。最近は高性能化が進み、機能性高分子を使った小型品や新しい市場であるハイブリッド自動車や電気自動車向け、それにインバーター向けなどパワー系をターゲットにした製品の開発が活発である。
 アルミ電解コンデンサーのチップタイプでは低背化が進み、高さが3.25mmの超低背品が開発されている。サン電子工業が開発したもので、高さ3.9mm品で培った超細幅スリッター、タブ端子付け、素子巻き取り、組み立て技術などの要素技術をベースにアルミ箔幅をさらに狭めて高さ3.25mmを実現した。容量は4.7〜100μF、定格電圧4〜50V、85度C1000時間保証。サイズはφ6.3、5、4mmがある。
 エルナーは、樹脂一体成型によるインモールド補助端子を設けることで40Gの加重に加え、150度C1000時間保証の横型チップアルミ電解コンデンサーを開発している。自動車電装品や工業関連機器に向けたもの。新開発の高温熱安定性電解液と高耐熱電極の採用、新開発の高耐熱封口体の使用により、横型チップで初の高耐熱を実現した。
 また、松下電子部品は、125度C2000時間保証、―40度Cでの低ESRを実現した自動車用チップアルミ電解コンデンサーを開発している。低温での電導度を従来品の約4倍にした高電導度電解液と、電解紙抵抗を従来品より20%低減した低抵抗電解紙を採用。自動車機器の最低動作保証温度の―40度Cでの低温ESR特性を従来品の約5分の1に低減している。新電解液は透過量を従来品に比べ約40%低減した。鉛フリーに対応、外装スリーブも塩ビレス化している。
 リード付き製品では、ニチコンがパソコンマザーボードの電源平滑回路や通信、AV機器の平滑回路用に超低インピーダンスと業界最高の許容リプル電流を実現したものや、105度C20000時間の超寿命高信頼性製品を開発している。
 機能性高分子アルミ電解コンデンサーは、小型・低ESR・耐高リプル電流を可能にし、高性能化がはかれることから近年開発も活発で、このところアルミ電解コンデンサー各社が小型、低ESR、高信頼性を実現した製品を大電流・高速応答が求められるパソコンのCPUの電源まわり向けに市場投入している(図1)。このコンデンサーは固体電解質に高導電性を持つ高分子を採用している。
 低ESR品では、日本ケミコンがリード付き製品で電解質にチオフェン誘導体を使い、この重合条件を最適化し、アルミ電極箔に固体電解コンデンサー専用に新しい電極箔を採用して8―14mΩと、これまでの一般的なものと比較して約30%低ESR化したものを開発している。鉛フリーハンダ実装対応、スリーブレスのため塩ビレスで環境にも配慮している。
 チップ積層型で超薄型の製品を松下電子部品が開発している。これはアルミ箔積層ベースでモールド樹脂となっており、最小サイズの高さをこれまでの1.2mmから0.95mmと超薄型化した。ESRは、12―18mΩとなっている。パソコン、液晶ディスプレイ、DC―DCコンバーターなどに供給。このタイプで大容量・低ESR品も開発・販売している。
 また、同社はアルミ電解箔を巻回した機能性アルミ電解コンデンサーに定格電圧を25Vとした高耐圧シリーズを開発している。これは高分子重合プロセスを最適化することで耐圧を25Vまで高めた。高耐圧化により、電源出力側用途だけでなく入力側用途へも展開できる。
 自動車用コンデンサーは、とくに耐熱性、信頼性が要求されるためコンデンサー各社は高耐熱、長寿命のアルミ電解コンデンサーなどを開発し、積極的に導入を提案している。高電導度電解液を採用し、耐リプル性能を向上させたハイブリッドカー向けのアルミ電解コンデンサーも開発されている。
 42V電源を搭載するハイブリッド車では瞬間的に非常に大きな電流を必要とする。このためコンデンサーには大電流に耐えるための高耐リプル性能が要求される。コンデンサーの耐リプル性能を実現するには、耐熱性に優れた電解液および電極箔の低抵抗化が必要とされる。
 松下電子部品では、高温下でも安定した性能を持つ高耐熱性電解液の開発と工法の改善により、電極箔の収納面積を向上することで低抵抗の電極箔を開発、リプル電流12.0―17.0Armsと従来比2倍以上の耐リプル性能を持つ小型のねじ端子型アルミ電解コンデンサーを開発している。寿命は105度C5000時間、φ35×42―φ35×65mmで1200―2000μFの静電容量をカバー。
 日本ケミコンが開発した世界で初めての750V定格の超高電圧ネジ端子アルミ電解コンデンサー(写真@)は、超高電圧化に適したエッチング箔の開発とともに新たな化成処理技術の開発によって、化成電圧が1100V内外という世界初の超高電圧用電極箔の開発に成功した。
 一方、電解質としては耐圧向上剤を作用した特殊な電解紙と実績のある高電圧用電解液を組み合わせた。寿命は85度C2000時間、φ50×φ80―φ89×170mmサイズで250―2200μFの静電容量をカバーする。
 ニチコンも630V定格の高電圧ねじ端子アルミ電解コンデンサーを開発している。
 また、車載用インバーター用電源に使用されるアルミ電解コンデンサーでは長円形アルミ電解コンデンサーが開発されている。
 車載用コンデンサーでは、スペース効率が重視されることから、小型・高容量化よりも小型・高リプル化が要求される。従来の円筒型では実装した場合、無駄なスペースが多く出ることから、長円形にしたものも開発されている。このコンデンサーはスペース効率だけでなく、内部素子とアルミケースが直接接触していることから、放熱性、対振動性に優れている。
図1
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  写真@
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機能性高分子チップアルミ電解コンデンサーの構造
750V定格高電圧アルミ電解コンデンサー


◆積層セラミックコンデンサー
 積層セラミックコンデンサーは、携帯電話を中心とするモバイル機器を中心に広く使われており、小型・大容量化が進んでいる(図2)。
 このコンデンサーはすべてチップタイプとなっており、静電容量0.1μFで0.6×0.3mm(0603)サイズの超小型品が開発されており、小型モジュールなどに使用されている。
 1.0×0.5mm(1005)サイズ品では、静電容量が1μFまで拡大している。また大容量化も進められており、3.2×2.5mm(3225)サイズで100μFの大容量品が登場している。積層セラミックコンデンサーの中・大容量品はDC―DCコンバーターなどアルミ電解コンデンサーの代替として使われることが多くなっており、小容量のDC―DCコンバーターICでは積層セラミックコンデンサーの使用を前提に設計したものが増えている。
 積層セラミックコンデンサーはこれまで、内部電極にパラジウムなど高価な貴金属を使用していたが、高価なため最近は卑金属(ニッケル電極)(写真A)を使ったものが増えてきている。
 また、特性的にもB(X5R、X7R、X8R)特性、F(Y5V)特性、CH(C0G)特性など温度変化に対して特性を保証した製品の品揃えが行われている。
 さらに環境問題に対応して鉛フリー化が進められている。自動車用では信頼性の向上のためにハンダの代わりに導電性接着剤を使ったものも開発されている。


図2
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  写真A
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チップ積層セラミックコンデンサーの構造例
Ni内部電極・・・卑金属電極・・・


◆タンタル電解コンデンサー
 積層セラミックコンデンサーとともに、携帯電話などモバイル機器に多く使われているのがタンタル電解コンデンサーである(図3)。このタンタル電解コンデンサーは高CVタンタル粉の採用で小型化と大容量化が進んでいる。大容量化では3.2×1.6mm(3216)サイズで静電容量47μF、小型品ではJケース〔1.6×0.8mm(1608)〕がある。
 1005サイズのチップタンタル電解コンデンサー(写真B)も開発されている。このコンデンサーはフィットレス実装対応の下面電極構造を採用している。小型、大容量、低ESRを武器に積層セラミックコンデンサーの代替を狙う。
 タンタル電解コンデンサーと基本構造は同じで、誘電体材料にニオブ(Nb)を使ったニオブ固体電解コンデンサーが開発されている。
 このニオブ固体電解コンデンサーは、タンタル電解コンデンサーに使われるタンタルが希少鉱物で、供給が不安定なことから代替品として開発が進められていたもの。
 このコンデンサーは、従来のチップタンタル電解コンデンサーと同じ形状、構造で、性能もほぼ同様である。電解質には導電性ポリマーと二酸化マンガンを使用したものがある。
 今後、生産量が増えればコスト面でのメリットが期待され、タンタル電解コンデンサーではコスト的に難しかった超大容量化も可能になるとされている。


図3
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  写真B
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チップタンタル電解コンデンサーの構造例
大容量チップ・・・1005サイズ・・・


電気二重層コンデンサー
 電気二重層コンデンサーは、大容量を特徴とするコンデンサーで電子機器のメモリーバックアップ電源など、おもに二次電池の代替として使用される。電池と比べて内部抵抗が小さく、急速充電・大電流放電が可能。また、アンペアレベルの放電が可能なため、小型モーター駆動用、道路鋲をはじめ、電力貯蔵装置などに使用できる。厚さ0.9mmといった小型品も開発されている。コンデンサーメーカーでは、将来の電気自動車の補助電源への採用を視野に小型・大容量化に取り組んでいる。




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